【正しい歩き方】「親指で蹴る」「地面をつかむ」は忘れましょう!

2018/03/29 18:33

ウォーキングは身近な健康法のため、多くの人に習慣的に取り入れられています。また、普段なかなかまとまった運動時間を取れない人も、「通勤で歩く時だけは」と、大股で早歩きを意識していることでしょう。

 

ところが正しい歩き方ができていないと、良かれと思って行っていたウォーキングが、かえってひざ痛や腰痛の原因になることがあります。身体に良くない歩き方で仮に毎日1万歩を歩いていたとしたら、片足に5千歩分のダメージを溜めることになります。

 

つまり、「歩けること」と、その「歩き方が正しい」かどうかは全く別の話なのです。

 

しかし私たち人間は、成長の過程で当たり前のように自然と歩き方を身につけていきます。そのため、正しい歩き方がどのようなものかということが顧みられることがあまりなく、正しい歩き方について多くの誤解があります。

 

その代表例が「親指で蹴って歩く」です。

 

今回は、親指で蹴って歩くことの誤解と正しい歩き方を解説していきます。

 

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正しい歩き方とは

始めに正しい歩き方とはどのようなものなのでしょうか?

 

想像していただきたいのは、スポーツ選手の無駄のない動きです。どんなスポーツでも構いません。おおよそトップクラスのスポーツ選手の動きというのは、力みなく関節の動きを最大限に活かし、その能力を発揮しています。

 

これと同じように歩き方にも、力みなく関節の動きを最大限に活かす方法があり、これが正しい歩き方になります。つまり正しい歩き方を習得すれば、無駄な力を入れることなく歩幅を維持し、足が上がってつまずきにくくなり、速度も保つことができるようになります。

 

例えば、趣味のゴルフ・マラソンなども、上達のため、ケガ防止のため、一番に力を入れるのはフォームの矯正だと思います。これと同じように、「正しい歩き方」の実践も、ウォーキングで疲れたりケガをするのを防ぐことができます。

 

ところが、歩き方というのは身近すぎて、正解を知っている人が少ないので、我流のままになっていることが多いのが現状です。

 

私たちは手を大きく身体の前で振って、腿を高く上げる「行進」を理想の歩き方として想像しがちです。しかし実は行進は、筋肉で頑張って身体を動かすいわば力技の歩き方なので、関節の動きが悪くなってしまい、身体の動きとしては非効率的な疲れやすい動きなのです。

 

それでは、正しい歩き方を考えた時に、親指で蹴って歩くと、身体にどのようなことが起こるのでしょうか?

 

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親指に力が入ると足首の動きが悪くなる

親指で蹴って歩くと、足の力を使って大股で速く歩けそうなので、消費カロリーが高まり、ウォーキング効果を上げる良い動作に思えます。しかし、実は親指に力が入るとその力みで足首が固まってしまい、足首の可動範囲が狭まります。そのため、ふくらはぎの筋肉が大きく動かず、かえって消費エネルギーを減らしてしまうのです。

 

試しに、手の親指と人差し指を曲げて手を振った場合と、中指・薬指・小指を曲げて手を振った場合の、手首の力の抜け具合を比べてみて下さい。親指・人差し指を曲げた時は、手首に若干の力みを感じ、外側3本を曲げた時と比べて手首を振り切れなくなります。

 

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これは足についても同様です。

つまり、親指で蹴って歩こうとすると、かえって足首の動きが悪くなります。そのため足の筋肉を効率良く使えず、消費エネルギーを下げてしまうことになります。また、足の筋肉が本来の能力を発揮してくれないと、太ももや股関節の筋肉がそれを補おうと力みが連鎖します。これが疲労の原因となり、のちのちの痛みの原因になってくるのです。

 

親指を力ませない使い方は、スポーツで応用されています。

 

ゴルフクラブや剣道の竹刀の握り方、他には柔道での相手の道着のつかみ方などは、小指からつかむのが基本になっています。これは手首の可動域を最大限に活かし、身体能力を引き出すために必要なことなのです。

 

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【足の指で地面をつかまなくても勝手につかんでる!?】

「親指で蹴って歩く」と同じように、足の指に無駄な力が入って、かえって足首の動きを悪くするのが「地面をつかむようにして歩く」意識です。

 

実はこれも無駄な力みを生む原因になります。

 

試しに手首を限界まで反らせてみて下さい。自然と指が開きませんか?指の間を閉じようとすると、手首が固くなって、指を開いた時ほど手首が反らなくなるのを感じられると思います。

 

今度は反対に、手首を限界まで曲げてみて下さい。今度は自然と指の間がくっつきますね?指の間を開こうとすると、先ほどとは反対に曲げにくくなると思います。

 

これは足首でも同様のことが起こります。このことはつまり、足首の可動範囲が正しく機能すれば、足の指を力ませなくても地面をつかんで歩けることが分かります。

 

 

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『靴底の外側が減らなくなると体の不調も消える』新保泰秀(主婦の友社)より❜ 

 

ですから、先ほどの手首を力ませない指の曲げ方と合わせると、歩く時には、後ろ足の中指と薬指・小指で地面を押し出すように使えば、足首が可動域いっぱいに動き、無駄に力まずとも自然に地面をつかんで歩けるようになります。

 

【腰痛防止!通勤・通学時にできる正しい歩き方】

 

 

足首の動きと第二の心臓のふくらはぎの関係

ふくらはぎは第二の心臓と言われます。それなので、ふくらはぎの筋肉が大きく伸び縮みすると、血管にポンプ作用が働いて全身の血行が良くなります。その結果、足のむくみや冷えの解消、新陳代謝の促進などが期待できます。

 

このふくらはぎの筋肉の動きには、足首の動きがが欠かせません。足首を大きく曲げれば、ふくらはぎが最大限に伸ばされ、逆に足首を伸ばせば伸ばすほど、ふくらはぎは縮みます。

 

つまり、親指の力を抜いて足首を使って歩くことを実践すれば、通勤や通学時に歩くだけで、ふくらはぎのポンプ作用を大いに引き出せるようになります。

 

このことからも、ウォーキングの時は親指で蹴らない方が、健康的な歩き方であることがお分かり頂けると思います。

 

【ふくらはぎのむくみを解消する歩き方のポイント】

 

まとめ~正しい歩き方:親指で蹴って歩いてはいけない

今回は、正しい歩き方のコツとして、足の指の力を抜いて足首の可動域を最大限に使う方法を解説してきました。

 

私たちは一生懸命に歩こうとすると、ついつい足の指に力を入れて地面を蹴ろうとしがちです。しかし、このような足の使い方は、実は関節の動きを固めてしまい、かえって疲れやすくなり、その蓄積で膝や腰を痛める危険性があります。

 

足首の可動域を最大限に使って歩くには、中指~小指の3本の指で身体を前へ送り出す意識が大切です。この3本を使えば、足首の動きを阻害することはありません。そして、足首が大きく動けば、自然に地面をつかんで歩けます。

 

さらに、足首が大きく動くと「第二の心臓」であるふくらはぎの筋肉も連動して大きく伸び縮みするので、全身の血行が良くなり、エネルギー消費も効率が良くなります。その結果として、足の冷えやむくみの解消も期待できます。

 

正しい歩き方を無意識に実践するには、スポーツ選手が日々基礎的な動きの確認をしているように、折に触れては身体の正しい使い方を意識して、身体にしみこませていくことが重要です。これまでの歩き方のクセは、一朝一夕には変えられるものではありませんが、毎日少しずつ実践をしていけば徐々に変化をしていきます。焦らずに続けて、健康的な歩き方を身に付けていきましょう。

 

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参考文献~正しい歩き方:親指で蹴ってあるいてはいけない

『「筋肉」よりも「骨」を使え』!甲野善紀・松村卓(ディスカバー携書)

『靴底の外側が減らなくなると体の不調も消える』新保泰秀(主婦の友社)